前歯の間が空いている。写真では口を閉じてしまう。食べ物がよく挟まる——。

すきっ歯(歯科では空隙歯列、前歯の真ん中の隙間は正中離開と呼びます)は、見た目の悩みとして相談されることが多い一方で、放っておくと少しずつ広がっていくことがある歯並びでもあります。

治し方を調べると「部分矯正なら数か月で終わる」という情報が目につきます。確かにそうした選択肢はありますが、適応が限られているというのが実際のところです。

当院(横浜 まつざわ矯正歯科)の説明でも、部分矯正は「低価格かつ短期間で矯正治療できるのが特長です。しかし、適応症例が限られている」としています。

なお、歯並びの状態には個人差があります。以下は一般的な整理であり、実際の治療方針は検査のうえで決まります。

隙間ができる原因は、ひとつではありません

原因を取り違えると、治しても戻ります。ここを取り違えると、治しても戻ります。

① 歯の大きさとあごの大きさが釣り合っていない

歯が小さめ、あるいはあごが大きめだと、歯を並べても余りが出ます。左右に均等に散らばることもあれば、前歯の真ん中に集まることもあります。

② 舌で前歯を押す癖がある

飲み込むときに舌を前歯の裏に押しつける、常に舌が下がって前歯に触れている——といった癖です。歯は弱い力でも長く加われば動きます。この癖が残っていると、隙間を閉じても戻ります。

③ 生まれつき歯の本数が少ない

永久歯が生えてこない部位があると(先天性欠如)、そのぶんの隙間が残ります。上の側切歯(前から2番目)に多く見られます。

④ 上唇小帯が太く、前歯の間に入り込んでいる

上唇の裏から歯ぐきへ伸びるひだが、前歯の間まで入り込んでいると、正中離開の原因になることがあります。

⑤ 歯周病で歯が動いた

歯を支える骨が減ると、噛む力に負けて歯が前に出たり、開いたりします。この場合は矯正の前に歯周病の治療が必要です。年齢が上がってから隙間が目立ってきた場合、これを疑います。

⑥ 歯を失ったまま放置している

抜けたところに隣の歯が倒れ込み、別の場所に隙間ができます。

原因を確かめないまま隙間だけ閉じると、戻る、あるいは別の場所に問題が出ることになります。検査で見ているのは、ここです。

放置すると、どうなるのか

見た目の問題だけであれば、治すかどうかは本人の選択です。ただし、機能の面でも影響があります。

日本矯正歯科学会は、悪い歯並びをそのままにしておくと、食べ物がよく噛めない/歯槽膿漏になりやすい/口臭の原因になる/あごの関節に負担をかけるといった問題が生じるとしています。

食べ物が挟まる。挟まったものが取れにくいと、その部分の歯ぐきに炎症が起こりやすくなります。

発音に影響することがある。サ行・タ行など、前歯のあたりで息を制御する音は、隙間から息が抜けると発音しにくくなることがあります。

隙間が広がることがある。とくに舌の癖や歯周病が背景にある場合、放置している間も力はかかり続けています。

噛む力が一部の歯に偏る。前歯で噛み切れないと、奥歯に負担が集中することがあります。

部分矯正で終わる場合・終わらない場合

部分矯正で終わる場合・終わらない場合

部分矯正が検討できるのは、おおむね次の条件がそろったときです。

  • 隙間が前歯のごく一部に限られている
  • 奥歯の噛み合わせに問題がない
  • 動かす量が小さく、歯を並べるスペースが足りている
  • 歯周組織(歯ぐきと骨)の状態が安定している

逆に、全体の矯正が必要になりやすいのは次の場合です。

  • 上下の噛み合わせのずれが背景にある(出っ歯・受け口・開咬など)
  • 隙間が複数の場所に散らばっている
  • 前歯を動かすと奥歯との位置関係が崩れる
  • 歯の本数が足りず、全体で調整しないと収まらない

前歯だけを動かしても、その歯が収まる位置を決めているのは奥歯の噛み合わせだからです。土台がずれたまま前歯だけ並べると、見た目は整っても噛み合わせが合わず、結果として戻りやすくなります。

「部分矯正でできますか」という質問には、検査をしないと答えられません。逆に言えば、検査をすれば分かります。

隙間を閉じる方法は、矯正だけではありません

すきっ歯の対処には、歯を動かす以外の方法もあります。どれが優れているという順位はなく、隙間の幅と原因によって向き不向きがあります。

矯正治療:歯そのものを動かして隙間を閉じます。歯を削りません。時間はかかります。

歯の形を足す方法(ダイレクトボンディング、被せ物など):隙間のぶんだけ歯を大きくします。期間は短くて済みますが、歯を削る場合があり、歯の形は自然な比率から外れることがあります。隙間が広いほど、歯が大きく見えます。

どちらが向くかは、隙間の幅、歯の大きさのバランス、噛み合わせ、そして原因が残るかどうかで決まります。舌の癖が原因なら、形を足しても力はかかり続けます。

当院は矯正歯科ですが、一般歯科治療(むし歯の治療)も行っています。どの方法が向くかを含めてご相談ください。

費用・期間・リスク

矯正治療は原則として自由診療(保険適用外)です。当院の費用は次のとおりで、表示はすべて税込です。

区分 項目 費用(自由診療・税込)
検査・診断 簡易検査 2,200円
検査・診断 精密検査 22,000円
検査・診断 診断 11,000円
ワイヤー矯正 表側矯正 990,000円
ワイヤー矯正 ハーフリンガル 1,320,000円
ワイヤー矯正 舌側矯正(裏側矯正) 1,485,000円
マウスピース矯正(ハイブリッド) フル 1,100,000円
部分矯正 表側 165,000〜550,000円(1歯 55,000円)
部分矯正 舌側(裏側) 275,000〜990,000円(1歯 88,000円)
処置料+技術料 成人矯正 6,600円
処置料+技術料 舌側矯正 7,700円

※ワイヤー矯正は処置料が別途かかります(アンカースクリュー料込み)。マウスピース矯正は処置料込み・アンカースクリュー料込みですが、治療の途中でワイヤーを一時的に使用する場合は別途処置料5,500円(税込)がかかります。

標準的な治療期間・回数:日本矯正歯科学会は、矯正歯科治療について「装置を入れておく期間が2〜3年程度かかり、簡単な治療では半年程度で済む場合もある」としています。

通院は装置を付けている間、おおむね1か月に1回程度です。装置を外したあとも、保定装置(リテーナー)を使いながらの経過観察が続きます。

主なリスク・副作用:装置を付けた直後や調整後に痛みや違和感が出ることがあります。歯みがきが難しくなるため、むし歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。

歯を動かすことで歯の根が短くなったり(歯根吸収)、歯ぐきが下がったりすることがあります。治療後に後戻りが起こることがあります。あごの関節に症状が出ることがあります。日本矯正歯科学会も、リスクとして長期間の治療、保険適用外で高額になること、装置装着による痛みやストレス、そして「やむを得ず、健康な歯を抜くことがある」ことを挙げています。

なお、装置の見え方を抑えたい場合は、歯の裏側に装置を付ける舌側矯正(裏側矯正)という方法があります。

当院の説明では、正面からは装置が見えず目立たないこと、装置が唾液で殺菌されるためむし歯になりにくいこと、他の矯正方法と比べて治療期間はほぼ変わらないことを特長として挙げています。一方で、舌の違和感が大きく、慣れるまではしゃべりにくくなる可能性があり、オーダーメイドで装置を製作するため費用が割高になります。

マウスピースだけで閉じられるのか

軽度のすきっ歯は、マウスピース型の装置が選択肢になることがあります。ただし、万能ではありません。

日本矯正歯科学会は、マウスピース型矯正装置による治療について、軽度の後戻りなど限定的な症例に限られること、毎日長時間の装着が必要であること、精密な歯の移動は原則として困難であり、満足のいく治療結果が得られない可能性があることを見解として示しています。

当院では、ワイヤー矯正とマウスピース矯正を組み合わせるハイブリッド矯正も行っています。それぞれのデメリットを減らし、メリットを活かすという考え方です。

装置ありきで決めるのではなく、動かす量と方向を先に決める

閉じたあと、また開かないために

閉じたあと、また開かないために

矯正治療は、装置を外したら終わりではありません。

歯は、動かしたあとしばらくは元の位置へ戻ろうとします。周りの骨と歯ぐきの線維が新しい位置に落ち着くまで時間がかかるためです。そこで使うのが保定装置(リテーナー)です。

すきっ歯の場合、後戻りの条件がそろいやすい面があります。隙間ができた原因が残っていれば、同じ力がまたかかるからです。

  • 舌の癖が続いていれば、また押されます
  • 歯周病が進行していれば、また動きます
  • 歯の本数が足りない場合、隙間の分をどこで吸収するかを設計しておく必要があります

だからこそ、当院では口腔筋機能療法(MFT)も行っています。舌の位置、飲み込み方、口を閉じる習慣を整えるトレーニングです。装置で歯を動かすことと、力のかかり方を変えることは、別の作業です。

保定装置は、決められた時間、決められた期間、使ってください。「もう大丈夫だろう」と自己判断でやめた結果、戻ってしまったというのは、実際によくあることです。

治療の進み方

初めての方には、次のような流れをご案内しています。

  1. ① 相談・簡易検査(2,200円・税込)

    今の状態を見て、どういう選択肢があるかをご説明します。

  2. ② 精密検査(22,000円・税込)で、隙間の原因を調べます

    レントゲン、歯型、写真などから、歯の大きさとあごの大きさの差、歯の本数、歯を支える骨の状態を確認します。

  3. ③ 診断(11,000円・税込)で、部分矯正の可否をお伝えします

    検査結果をもとに、治療の方針、使う装置、期間、費用をご説明します。部分矯正で対応できるかどうかは、ここで決まります。

  4. ④ 装置を付ける

    方針に納得いただいてから開始します。

  5. ⑤ 調整(おおむね月1回)

    歯の動きを見ながら調整します。

  6. ⑥ 装置を外し、保定へ

    リテーナーを使いながら、定期的に確認します。

大人になってからでもできますか

できます。日本矯正歯科学会も「中・高年の方々も治療が可能となってきました」としています。

ただし同時に、「その年齢では成長・発育は終了しており、歯の移動が円滑でないため治療期間が長くなることが多いようです」とも述べています。

大人の矯正で重要なのは、始める前の歯ぐきと骨の状態です。歯周病があると、歯を動かすことでかえって悪化させることがあります。必要な場合は、歯周病の治療を先に行います。これは遠回りではなく、動かした歯を長く保つための前提です。

当院でできること

横浜 まつざわ矯正歯科(横浜市神奈川区反町)は、矯正歯科を専門とする医院です。

  • 精密検査による診断(部分矯正で対応できるかの判断を含む)
  • 舌側矯正(裏側矯正)/表側矯正/ハーフリンガル矯正
  • マウスピース矯正/ハイブリッド矯正(ワイヤーとマウスピースの組み合わせ)
  • 部分矯正(適応の範囲内で)
  • お子さまの矯正治療
  • 口腔筋機能療法(MFT)——舌の癖への対処
  • 一般歯科治療(むし歯の治療)

院長は舌側矯正(裏側矯正)を専門とする医院での勤務を経て開院しており、装置が見えないことを重視される方のご相談を多くお受けしています。

診療時間は10:00〜13:00/14:00〜18:30(月曜・金曜は13:00〜20:00)、休診は木・日・祝日です。電話は045-321-6665。東急東横線 反町駅から徒歩3分です。

▶ ワイヤー矯正(舌側・表側・ハーフリンガル)

▶ 歯並び予防(口腔筋機能療法)

▶ 矯正治療費用

よくある質問

Q. 部分矯正なら、いくらぐらいですか。

A. 当院の部分矯正は、表側 165,000〜550,000円(1歯 55,000円)、舌側 275,000〜990,000円(1歯 88,000円)(いずれも自由診療・税込)です。動かす歯の本数によって変わります。ただし、部分矯正で対応できるかどうかは検査で判断します。

Q. 隙間が1か所だけです。すぐ終わりますか。

A. 隙間の場所と、奥歯の噛み合わせによります。前歯だけを動かしても、噛み合わせが合わなければ戻りやすくなります。まず検査でご確認ください。

Q. 舌で歯を押す癖があります。治せますか。

A. 口腔筋機能療法(MFT)という方法があります。舌の位置や飲み込み方を整えるトレーニングです。歯を動かすことと並行して行うことがあります。

Q. 抜歯は必要ですか。

A. すきっ歯では、隙間を閉じる方向に動かすため、抜歯が不要なことが多くあります。ただし、噛み合わせのずれが背景にある場合は別です。日本矯正歯科学会も、矯正治療では「やむを得ず、健康な歯を抜くことがある」としています。検査のうえでご説明します。

Q. 保険は使えますか。

A. 矯正治療は原則として自由診療です。保険が使えるのは、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常、3歯以上の永久歯の萌出不全、顎変形症の手術前後の矯正——の3つに限られ、いずれも届出を行った医療機関でのみ実施できます。

Q. 装置が見えるのが気になります。

A. 歯の裏側に付ける舌側矯正(裏側矯正)という方法があります。正面からは見えませんが、舌の違和感が生じたり慣れるまでしゃべりにくくなったりする可能性があり、費用は割高になります。

Q. 治療中にむし歯になりませんか。

A. 装置が付いていると歯みがきは難しくなります。リスクは上がるとお考えください。清掃の方法をお伝えし、必要に応じて一般歯科治療も行います。

Q. 治したあと、また開きますか。

A. 後戻りは起こり得ます。保定装置を決められたとおり使うこと、そして隙間ができた原因(舌の癖、歯周病)に対処しておくことが必要です。

Q. 何歳まで治療できますか。

A. 上限の年齢はありません。ただし、歯ぐきと骨の状態が条件になります。歯周病がある場合は、その治療を先に行います。

まとめ

  • すきっ歯の原因は、歯とあごの大きさの差/舌の癖/歯の本数/上唇小帯/歯周病/歯の欠損の放置など複数ある
  • 原因を確かめずに隙間だけ閉じると、戻る、あるいは別の場所に問題が出る
  • 部分矯正の適応は限られる。奥歯の噛み合わせに問題がなく、動かす量が小さい場合に検討できる
  • 隙間を閉じる方法は矯正だけでなく、歯の形を足す方法もある。隙間の幅と原因で向き不向きが決まる
  • 矯正は自由診療。当院の費用は表側990,000円、舌側1,485,000円など(税込)。装置を付けている期間は2〜3年程度(日本矯正歯科学会)
  • リスクとして、痛み・むし歯・歯根吸収・歯ぐきの退縮・後戻りなどがある
  • 閉じたあとは保定装置が必要。舌の癖には口腔筋機能療法(MFT)という対処がある

「部分矯正で終わるかどうか」は、検査をすれば分かる。期間と費用の見通しを立ててから始めるほうが、途中で迷いにくい。

すきっ歯のご相談は、横浜・反町の横浜 まつざわ矯正歯科で承っています。

監修者情報

横浜 まつざわ矯正歯科 院長

松澤 匡純(まつざわ まさずみ)

2009年 歯科医師免許取得。2014年 歯学博士号取得。舌側矯正(裏側矯正)を専門とする医院、および都内の矯正歯科医院での勤務を経て、当院院長に就任。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。歯並びの状態には個人差があります。実際の治療方針・期間・費用は、検査と診断のうえで決定します。

参考文献

  • 公益社団法人日本矯正歯科学会「矯正歯科治療について」 https://www.jos.gr.jp/about
  • 公益社団法人日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 https://www.jos.gr.jp/facility